ツーリング中の挨拶「ヤエー」に込められたライダーの心理
ヤエーという挨拶の始まりと歴史
ツーリングで郊外の道やワインディングを走っていると、対向車線を走ってくる見知らぬバイクのライダーから手を振られたり、軽く会釈をされたりすることがあります。
このライダー同士の挨拶は、現在では一般的にヤエーと呼ばれて親しまれていますが、その歴史を遡るとかつてはピースサインと呼ばれていました。
1980年代のバイクブームの時代、北海道などの長距離ツーリングスポットですれ違うライダーたちが、お互いの旅の安全を祈り、同じ場所を走っているという連帯感からピースサインを交わし始めたのが起源とされています。
当時のバイク雑誌などでも盛んに取り上げられ、ツーリングの醍醐味のひとつとして全国に広まりました。
その後、時代の流れとともにピースサインを交わす習慣は一時期衰退を見せましたが、インターネットの普及や動画共有サイトの台頭によって再び脚光を浴びることになります。
ヤエーという言葉の語源は、英語でイェーイと歓声を上げる意味のスペルを、インターネットの掲示板で誰かが意図的に、あるいは間違えて打ち込んだことが発端と言われています。
このちょっとしたスペルミスから生まれた言葉が、ネット上のライダーたちの間で面白がられて定着し、現在では挨拶そのものを指す言葉として広く使われるようになりました。
時代が変わっても、見知らぬ者同士が道をすれ違う一瞬に心を通わせるという本質は変わらず受け継がれています。
ヤエーに込められたライダーたちの心理
すれ違いざまのほんの一瞬に交わされるヤエーには、ライダーたちの様々なポジティブな心理が込められています。
最も根本にあるのは、同じバイクという趣味を持つ仲間に対する強い連帯感や親近感です。
車と違って体をむき出しにして風を受けながら走るバイクは、暑さや寒さ、突然の雨など、過酷な状況を肌で感じる乗り物です。
だからこそ、同じように厳しい環境の中でツーリングを楽しんでいる相手を見ると、無意識のうちにエールを送りたくなる心理が働きます。
また、ヤエーにはこの先も気をつけて、安全運転で旅を楽しんでくださいという相手の無事を祈る気持ちも込められています。
特に見通しの悪い山道や、路面状況があまり良くない場所ですれ違う際の挨拶は、お互いに注意を喚起し合う意味合いも持ち合わせています。
こちらから手を振って相手から振り返してもらった瞬間の喜びは非常に大きく、ヘルメットの中で思わず笑顔になってしまうライダーも多いはずです。
たった一度きりのすれ違いで、二度と会うことはないかもしれない相手との無言のコミュニケーションは、ソロツーリングで感じるちょっとした孤独感を癒やしてくれるでしょう。
年齢や性別、乗っているバイクの車種を問わず一瞬にして心が通じ合うような感覚を味わえるのが、ヤエーの持つ不思議な魅力なのです。
ヤエーを交わす際の注意点とマナー
ツーリングをより楽しくしてくれるヤエーですが、実際に行う際にはいくつか気をつけておくべき注意点とマナーが存在します。
最も重要なのは、何よりも自分自身の安全運転を最優先にするということです。
ヤエーはあくまでも余裕がある時に行う付加的なコミュニケーションであり、義務ではありません。
カーブを曲がっている最中や、クラッチ操作やブレーキ操作で手が離せない状況で無理に手を振ろうとすると、バランスを崩して重大な事故に繋がる危険性があります。
自分が危ないと感じた時は無理に反応せず、軽く会釈をするか、そのまま運転に集中することが正しい判断です。
また、交通量の多い市街地や渋滞している道では、周囲の車や歩行者に誤解を与えたり、注意力を散漫にさせたりする可能性があるため、ヤエーは控えましょう。
そして心理的な面で気をつけるべきなのは、相手からヤエーが返ってこなくても決して落ち込んだり腹を立てたりしないという点です。
対向車のライダーは初心者で操作に必死だったり、疲れが溜まっていて気づかなかったり、あるいはヤエーという習慣自体が好きではない人も当然います。
挨拶はあくまでこちらからの一方的な好意の表現であると割り切り、見返りを求めない心の余裕を持つことが大切です。
安全第一を心がけ、お互いが気持ちよく風を感じられるようなスマートなヤエーを交わすことで、バイクライフはさらに豊かなものになるでしょう。
